忘れるあなた

2020/12/21

取材の事前調査のために朝倉氏遺跡に行く。私は雪に埋もれたこの場所が好きだ。毎年この景色を見に来ている気がする。何かの用事が重なるだけだから、偶然だけど。人も少なくて、ゆっくり眺められる。編集営業の担当さんに案内してもらって、庭園跡をいくつか回る。ムーミンのニョロニョロのように突出する岩が美しくて、生きている。いや、冬眠している。朝倉氏遺跡に向かう途中に、「戦国」という看板があり、その隣にコカ・コーラの看板がくっついている。私たちはきっとこういう感じで歴史にくっついているんだろう。べったりと。私情を挟みまくり、インスタントに、エモーショナルに。朝倉義景は自分が死んだ後、こんな風に自分の身が取り扱われることに思いもよらなかっただろうし、無念のうちにその生涯を閉じていった。いや、無念だったのだろうか?それすら、本人にしかわからないよな。残された庭と巨石を眺めながら、カメラを向けて、次に来る時は花を手向けられたらと思うのだけど、きっと忘れるだろう。インスタントに。