麻酔におちる時

2020/12/27

福井の駅前のまちを歩く。大きな囲いで隠されてしまったまちの一角は、ぐうぐうと眠っている。夫が、ゴーストタウンみたいだな、と言った。私は、麻酔をされた手術中の自分を思い出した。「すぐに効きますからね」と主治医から声をかけられて、数えて5秒。もう意識は途切れていた。まちの記憶も、この工事の間には途切れてしまうのだろうか?まわりで一生懸命治療をする人々の中には刻まれるのだろうか?手術によって「よくなる」のだろうか?それは誰にもわからない。もしかしたら、今ならば、この囲いを眺めながら、いろいろな空想を描けるのではないだろうか。具体的な何かに生まれ変わる前に、空想をしてみることは無駄ではないんじゃないか。ぶつぶつと考えながら、帰り際に、どうせならGODIVAのチョコを買って帰ればよかったと思いながら駐車場を出るのだった。