千歳くんはラムネ瓶のなか 1

2021/1/1

2021年の1冊目は何にしようかな?いつもなら「読まねばならない」を優先させていたけれど、もうはなっからそういう読み方は集中力とテンションが続かないのでやめた。積まれた本を手に取り、タイトルや装丁やイラストやあらすじを見て、その時の気分と「キュッ」と合わさるものを選ぶことにした。

それで選んだのが、ガガガ文庫の『千歳くんはラムネ瓶のなか』です。作家の裕夢さんが福井出身で、舞台も福井のライトノベル。しかも「このライトノベルがすごい! 2021」の第1位に選ばれたということで、これは読んでおきたい!と手に取ったのである。

ライトノベルをきちんと読むのはわたしが書店員の時に担当して以来なので、まさかの15年ぶりとかで、正直ゾッとする。(ハルヒシリーズとかキノ旅を売っておりました。でもでも杉田智和さんだって私と同世代だもんね!誇り!)

ライトノベルの定義はいまだにしっくりくるものがないけれど、『千歳くん〜』を読み始めたら、それこそpixivとかで漫画を漁っている時に「あっこれ入りがいい感じやなぁ〜」と思っていたら、そのままハマって全作読んでしまったみたいな流れに似ていて、あっという間にチーム千歳の鮮やかなキャラクターと世界でわたしはモブの一人として彼らの動向を見守っていた。

他のチート系とは明らかに違う(と思う。あんまり読んだことないから自信ないけど)。「“リア充側”の青春ラブコメ」と言うには、いささか軽すぎるぐらいの視点の多様さと考察があり、複雑化した学校のカーストにスパンと新しい切り口を与えていることは確かだと思うし、ベースになりうる勧善懲悪を超えてしまっているから、学校に限らず人とマウントとは?とか哲学めいたことまで導き出されてしまうのだ。

で、読みながらめっちゃ笑ってしまう。千歳くんの軽やかな冗談と返しが、ツボをツンツンついてくるのである。こういう友達いたら、そりゃ好きになるわなぁ。もちろん千歳くんを囲むかわいすぎる女子たちを考えれば、王道のハーレム設定なのだけど、これがまたローヤルさわやか。この後、彼が誰と結ばれるのか?結ばれないのか?は必然的に気になってくるだろう。

それにしても、作者の裕夢さん、かなりの読書家なのでは?と推測しているのだが。文章の巧妙さも当然ながら、場面に対する繊細なキャラクターの変化はかゆいところに手が届くようで気持ち良い。

なんとなく、1巻はまだ序章なのでは??と思ったり。というわけで、2巻目買って、読み進めてみたいと思います。